離職率が高い理由
-人材育成の在り方/介護業界の苦楽/人材不足の実情/人材確保の難しさ/待遇改善問題-
- 施設の運営に施設長の色が出てくる。空気感やケアのやり方が施設ごとに大きく変わる。相性が合わない場合、別の介護施設に転職する人は少なくない。(第3回)
- 前日から働き始めた新人が出勤して来ないことを心配し、職員が電話したところ、電話は繋がらず、その後そのまま辞めてしまった。1カ月程度で辞めた人は「結婚するのに家庭を養えない」として、低賃金を理由に挙げた。(第3回)
- 長く働いている人はいるが、1週間で辞める人もいる。欠員を補てんしても教育に何カ月も掛かる。(第3回)
- ライフプランを立てにくい。結婚した頃、手取り収入は15万円程度。ボランティアに毛が生えたぐらいの収入で、子育てなどを考えると不安が残り、周りからは「大丈夫?」と言われた。専門学校の同期は5年ぐらいで1割程度しか残らず、結婚などを契機に別の業界に転職した。(第5回)
- 介護福祉士の資格を貰っても介護業界に入る人は半分。介護福祉士は3年以上の従事経験を経て国家試験を受けなければならないが、大学などで関連講座を学べば免除される。ただ、50万人以上が資格を持っているのに半分近くが従事していない。(第6回)
- 30~40歳代で異業種から入っても、経験・資格がなければ高い給料を払えない。ただ、20歳代から10~15年やって来て、奥さんを養っている人は多い。週刊誌ではネガティブな方が売れるため、業界のイメージが悪いが、現場の全てではない。(第6回)
- 介護のプロとしてサービスを提供し、その対価として費用を貰うという意識の人間は多くない。ボランティアや福祉の美辞麗句はもういい。「愛(=ボランティア)とソロバン(=サービス業)」のバランス感覚を持って、最高のサービスを提供するサービス業のプロが増えるべきだ(第6回)
- 今回の震災でボランティアを受け入れたが、介護や福祉に興味を持っている人は多く、ボランティアには是非、働いて貰いたい人がいる。しかし、仕事として介護職で働くとなった時、介護業界への就職はハードルが高い。(第6回)
- 介護現場で本当に辛くて嫌いになって辞める人。給与や人間関係で辞めるケースはあるが、殆どの人が「こんなに良い仕事はない」と言っている。(第6回)
- 給与水準が低いとは思わない。他業界の新卒と比べると、初任給は高い。ただ、若い人を雇っても育てない。使い捨てライターのように「若い子、新卒でいい」という雰囲気。最終的に「人」に尽きる仕事。5~10年後のステップアップに向けたプロセスや給与体系も作らないと。(第6回)
- 介護業界は労働集約型のビジネス。職員の給料を上げても報酬は増えるわけではない。ステップアップの制度を入れても、夢や希望があるのだろうか。(第6回)
- どの仕事であっても初任給は安い。それなりに年数を積んで、資格を取れば一般企業と変わらないぐらいの給料を貰える。(第8回)
- 意欲と高い志を持って仕事している人はいるが自己啓発しない人も多い。ただ、人に使われるだけでは面白くない。専門職の誇りを持たないと、社会で認められない。「資格を取った以上、専門職種なんだ」との意識を持つべき。殻を破れば収入も上がり、給料も変わって来る。(第8回)
- 介護資格講師として受講生に対し、「介護職の専門職としてプライドと責任感を持って仕事しなければならない」と話している。(第8回)
- 受講生の年齢層を見ると、下は17歳、上は78歳まで受け持った。講師を始めた3年前は女性が多く、1クラスに男性1人ぐらいだったが、最近は30~40歳代の男性が増えており、どのクラスでも男性が半分程度。24人のうち、18人が男性だったクラスを受け持った。(第8回)
- ここ1年ぐらいで男性が増えた印象がある。不景気の影響か。資格を取って仕事に就いているかと言うと、実習で現場を見て「ちょっと難しいな」と言って断念する人もいる。(第8回)
人手不足で常に募集を掛けている所もある。有り難いことに、うちの会社は待っている方もいるぐらいだが、一般で見ると人繰りは厳しい。(第9回)
- 去年、制作会社として介護の求人サイトを立ち上げ、半年ぐらい反響を見たが、かなり良かった。20歳代ぐらいの若い人か、年の上の人が多い。ただ、30~40歳代は介護業界への就職を希望する問い合わせは少ない。(第9回)
- 離職率が高いと言われている業界の中で、同じメンバーで仕事ができないのは辛い。(第10回)
- 現場の介護職員だけでなく、「当初の想定よりも経営環境が厳しい」という理由で、簡単に撤退を決めた経営者もいる。(第10回)
- 給与水準の引き上げについては、施設経営者による努力では限界がある。経営者が経営理念を示さないと、人は付いて来ない。(第10回)
- 社会福祉学科に所属しても介護業界への就職希望者は見当たらず、むしろ公務員希望者が多い。「介護に行きたいけど、収入的に不安なので、公務員の勉強をして安心したい」と考えている大学生が少なくない。(第11回)
- 福祉フリーペーパーを作成しているのに、サークルの仲間のうち、介護職を志す人は余りいない。(第11回)
- 現場を経験していると、今の職場で天井が見えて、人生設計を考えるようになる。そこで起業に行き着いた人が相談に来る傾向がある。(第11回)
- 以前に勤めた通常規模のデイサービスでは頻繁に人が入れ替わっていた。「どうして離職率が高いのか?」といった点を見極める必要があり、職員の意識改革を行えば、全部が良い方向に回る。職員が課題に向き合い、管理者がトップダウンで方向性のベクトルを決めるべきだ(第14回)
- 受験者には40~50歳代の人が多い。「高齢化時代を迎えて将来が安定している」「介護だったらできるんじゃないか」といった動機の希望者も散見される。(第14回)
- 「介護ならできる」「この業務をこなせば良い」という気持ちの人もいる。採用後に楽しさを見付ければ良いのだが、利用者を人として見ず、オムツ交換、食事介助など一つの業務としか考えられない人がいる。人の立場に立って考えられない人は向かない。誰でも良い訳ではない。(第14回)
- 働ける場所が他に多い医療・介護業界では大量退職も話題となる。事業所のキーマンがいなくなると、みんな引っこ抜いてしまう。普通の業界では有り得ないが、横の繋がりが多い医療・介護では普通に起こる。(第15回)
- 前の訪問介護事業所では2~3人が一気に辞めた。(第15回)
- 新卒学生に内定を出したとしても辞退されるケースも。両親から「介護職は止めなさい」「大学まで行かせて何で介護業界なの?」「自分達の学科は違うのだから、もっと違う所を選べば」と言われる学生も多い。(第21回)
- 周囲が介護職を薦めない理由として、「ハードな勤務」「離職率が高い」というイメージが強く、給与が上がらない、辛い、きついというイメージ。すぐに退職することを勝手にイメージしており、親は介護職を良く見ていない。(第21回)
- 周囲の意見に流されて内定を辞退されるのは、事業者にもショックな出来事。20歳を越えても親の意向に進路が左右されて、自分自身の意見は何処にあるのか。介護業界に限らず、何処でもそういう話を聞く。(第21回)
- 職場の人間関係に悩んでいる人は多い。仕事以外の要因で愚痴を言い合い、介護ではない部分で当初の志を忘れてしまう。介護業界の場合、離職率の高さに結び付いている。愚痴がエスカレートし、職場を辞める。(第22回)
- 在宅系事業所を何度か転職した。今の会社は離職者が少ないが、人が頻繁に入れ替わる事業所も。男性は別の業界に転職する。介護が嫌になるのではなく、周りの原因が影響してモチベーションが下がる。(第22回)
- 人間関係の構築に苦労した。以前は大量退職も経験しており、理由は「給料が安い」「介護の仕事が嫌」ではなく、「職場の雰囲気が悪い」という答え。「あなたが何を考えているか分からない」とストレートに言われた。(第22回)
- 自分自身の意識改革に取り組み、経営者としての自分を作り上げるととともに、働く職員の目線に立った上での経営・運営理念を示し、それを自らアウトプットすることにした。(第22回)
- 卒業生の半分は介護・福祉に入るが、残りは普通の企業に就職する。幾ら大学で勉強しても、社会福祉士の実習で1カ月介護して認知症の方と接すると、「性格的に向いていない」と思って転向する人もいれば、「面白い」と感じて就職する人もいる。(第24回)
- 看護師は売り手市場。資格を持っているけど働いていない「潜在看護師」を如何に復帰させるかが課題だが、医療の世界では技術水準が上がってしまうので、大学病院に就職しにくい。(第24回)
- 看護師希望者の授業は70人のうち男性は15人。少ない場合は3人。卒業後は9割9分が看護師になる。精神・老年看護に興味を持つ人は70人のうち1割か2割。(第24回)
- 進学して来る時、「自分の家で介護していたから」と語る子はいるが、多くは分かりやすい急性期の技術を身に付けたいと思っている。(第24回)
- 大不況期なのに離職率の数字が上がっているのは厳しい。介護業界は年収300万円。社会保険に入れて正規職員として年収300万円を確保できる業界は地方では余りないのに、離職率の高さは異常。(第24回)
- 一生懸命やっても報われない時がある。体も腰も痛くなる。命を預かっているので肉体的、精神的に辛い。同じ300万円の収入ならば別の仕事を選ぶ人もいる。「介護は社会全体の問題」と啓発して行くべきだ。(第24回)
- 男性介護職の認知度が上がっている。(第25回)
- 2006年頃は急激に人材がいなくなった。バブルの頃も求人が来なかった。苦労した時代があったが、極端に言うと金を出して求人を出そうが、ハローワークに出そうが、誰も応募も来ない状態。(第25回)
- リーマンショック以来、介護職員の確保は一時的に良くなった。他の業態が不景気となると、介護業界の人材獲得容易性が上がって来る。その前は本当に人材が不足していた。(第25回)
- 相変わらず他の産業が力強く成長している状況ではないので、リーマンショック前ほど厳しくない。しかし、リーマンショック直後に比較すると、採用は難しくなっている。(第25回)
- 介護職員処遇改善交付金制度の影響もあり、印象として就職は安定している。福祉系学校の学生数も応募が増えたと聞いている。(第25回)
- 「こういう会社だったら勤められる」と当社に来てくれなくなる部分がある。「会社に勤めて頑張りたい」と思われるようなサービスを提供できる体制を整えることが重要。人材獲得競争に勝てることが重要。(第25回)
- 売り手市場のように見えるけど、資格の問題がある。中途採用も経験のあるなしで採用されたり、されなかったりする。独特の世界があるが故に、参入障壁が高い。(第25回)
- 高齢化で介護業界のサービスそのもののニーズは増えている。介護事業者の数も増えている。そんなにパイが大きくない優秀な介護人材の取り合いがある。(第25回)
- 今の事業所は定着率が高い。数年経った段階で違う事業部に異動することで、様々な部署の仕事を学ぶ形を採っている。(第28回)
- ヘルパーとして働いているのは主に40歳代。上は70歳から下は20歳に及ぶが、2~3割は離職している。次の日に急に来なくなることが結構ある。離職する人は20~30歳代の男性が多い。採用に時間と金を掛けているから根付いてくれないと非常にマイナス。(第29回)
- 男性、女性の比率は余り関係ないと思う。個々の会社の特徴はあるが、利用者の家に行ってやることは何処の会社でも一緒。「この会社に合わないな」と思えば、「他の会社に行けばいいか」という感じの方は辞める人に多い。(第29回)
- 離職を防ぐ上ではコミュニケーションが一番。他の業種の会社と同じ。職場が楽しくないと来てくれない。コミュニケーションを取れるような歓迎会、飲み会を開く。(第29回)
- 働く方の希望になるべく沿ってシフトを作ることで対応している。(第29回)
- 世間には「介護が特別なもの」という意識があるが、普通の会社と同じ。自分の会社で取り組んでいるのは給与の安定。パートやアルバイトではなく、常勤雇用を採用する。職場環境もそうだし、働く時間を明記してオープンな形が良い。(第29回)
- 離職率は意外と少ない。創業して3年なので、みんな残っている。(第29回)
- 介護業界に参入して2年弱だが、離職率は高いとは思っていない。(第32回)
- 右肩上がりの給与体系が出来れば離職は増えない。「3~5年後も同じ職場で、同じことをやって、同じ環境で…」となったら、従業員もモチベーションを保つのは大変。若い職員にチャンスを与えられる環境づくりが重要。(第32回)
- 国は「ヘルパー2級を辞めて1級を増やせ」みたいな形で加算する。その御蔭で2級のヘルパーが集まらない。介護事業所はヘルパーがなくて困っている。(第32回)
- 昔はケアマネージャーが足りなくて困っていたけど、今はケアマネが余っている。昔は月給50~60万円ぐらいあったが、今は現場に行くヘルパーがいなくて何処も困っている。資格を持っている人はたくさんいる。(第32回)
- デパートで販売員をやった方がヘルパーよりも高い時給。これはおかしい。だから離職率が高くなる。(第32回)
- 患者の数が同じであれば、患者を増やす以外ない。ずっと拡大し続けることで人を雇える。報酬が一定であれば、それに掛けられるコストは上げられない。(第32回)
- 農協自らが実施するヘルパー養成事業と、ハローワークというパターンもある。(第33回)
- 「農協の事業所で働きたい。同じ賃金ならば農協で働いた方が良い」という情報が介護業界の専門家同士で情報が出回る。農協は地域の組織で個人の繋がりがあるので、資格を取ったと分かると声を掛ける。(第33回)
- 辞めている状況はないが、他の職種でスタッフが辞めて行くのが辛い。どうして行くか考えないといけない。(第35回)
- 違う所で働いている人を他事業所で見掛けて「アレッ?」という話は結構ある。本当に嫌になった時には業界から去る。メール一本で「明日から来ません」という人もいた。連絡も何もないで来なくなる時もある。(第36回)
- 「何で?」という思いは最後に残るが、離職が起きることは止むを得ない。起こる直前に察知して気を付けている。結果的に突然に辞職することはある。(第36回)
- 履歴書を見ても、1回別の産業に行った人が何年後かに戻ってくる。多分働きやすい部分がある。「やっぱり介護がいい」というセリフを何度も聞いた。(第36回)
- 介護職の悲惨な現実ばかり報道されるが、楽しませることをどうしようかを日々考えている。スタッフは利用者のことを思う。思ってくれているスタッフをどう盛り上げて行くか。何で離職率が高いのか追究して辞めないで貰えるように常に工夫が必要。(第36回)。
- スタッフを盛り上げる手段としては、飲み会による交流を重視している。意外と介護職場は年齢の幅が広く、集まりにくい部分があるので、なるべく参加して貰う。(第36回)
- 履歴書を見ても、1回別の産業に行った人が何年後かに戻ってくる。多分働きやすい部分がある。「やっぱり介護がいい」というセリフを何度も聞いた。(第36回)
- 楽しんで働いている人達が働く会社に寄って来る。ブログで会社に「どういうスタッフ人がいる」「どういう勉強会が開かれている」とアップし、「ここに来たら成長できるんじゃないか」と思って欲しい。(第36回)
- 最初はスポーツインストラクターへの就職を考えた。しかし、現場を見て違和感を持ち、訪問入浴のオペレーターに応募した。寝たきりの高齢者を抱えて風呂に持って行くのが主な仕事。力があり余っていたので、「自分がやるしかない」と思った。(第40回)
- 寝たきりの人で、家族が熱心に美味しい物を食べさせていると、100キロを超える人も。私は苦じゃなかった。運ぶにはコツみたいなものがある。知らないうちに体得した。(第40回)
- コツを分からないと腰痛になる。1~2日で直らない重度な腰痛。膝を悪くする。(第40回)
- 独居だった祖母が腰痛で入院し、家族が自宅に呼び寄せたところ、認知症が重度化した。しかし、もう1度自宅で一人暮らしさせるとともに、デイサービスや訪問介護を利用すると症状が改善した。これを見て介護業界に入った(第40回)
- 特別養護老人ホームは寝たきりの高齢者が多く、集団生活で個別ケアも難しい。入居している方に良いサービスを提供したいと思って転職した。(第40回)
- 最初は腰痛に悩み、自分の介護技術の足りなさに気付いた。介助の仕方によって自分の体を守ることが利用者の満足に繋がる。こちらにきつい事は相手にとってもきつい。自分の技術を磨かないと。(第40回)
- トレーナーと呼ばれる先輩による直接指導。本社に集まって外部の人を招いて援助技術を学ぶ集合研修を実施している。(第40回)
- 「ここはダメだからもっと良い所がある」と思っていたが、結局は自分の問題。そう思うんだったら変えればいい。現在の職場は30歳になって初めて戻りたいと思えるし、仲間がいる。毎日支えられて生かされている。(第44回)
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介護業界のイメージ/人材確保/報道への注文
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介護現場の人間関係
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介護保険外のサービス拡充
サービス提供の現状
サービス付き高齢者向け住宅/有料老人ホーム、特養・老健の現状と展望
認知症患者への対応
利用者のニーズと対応策
ケアプランの充実に向けて/ケアプランの自己作成
改正介護保険法の評価
介護報酬改定、制度改革に向けた注文
医療・介護の連携に向けて
東日本大震災の影響
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