改正介護保険法の評価
- 「地域包括ケア」とは「住み慣れた地域で、安心して住み続けられる」「高齢になって介護が必要になっても、365日24時間絶え間ない介護を提供されながら生活できる」「自助、公助、共助の理念の元に生活する」という定義。理念は素晴らしい。(第26回)
- 国は当初、地域包括ケアを2015年度に実現するとしていたが、2025年度に持ち越された。どちらかと言うと政治家の人達が掲げる理念であり、官僚の人達は今の雇用状況や施設整備を全部含めて細かく具体的に出していかなければいけない。(第26回)
- 24時間訪問看護介護にしても、都内でセキュリティがしっかりしているマンションに鍵を持ってスタッフが自宅に入り、介護して帰ることが本当にできるか。(第26回)
- 地域包括ケアは認知症ケアに殆ど触れていない。「認知症の方でも安心して」と言う方もいるが、定期巡回型なので定められた時間の中で行っており、認知症の方はケアが大変。機械的に行くことが認知症の高齢者にとっていいサービスなのか。(第26回)
- 既に24時間訪問介護看護サービスを展開しているが、住み慣れた家で老いる「住み老い」が重要。住み老いに必要な在宅医療をどう提供するか、生活支援をどう提供するのかを整理する必要がある。特に重度要介護、単身という課題を抱えている利用者に向けて提供されるべきだ。(第26回)
- 家族と同居する利用者を対象に、夜中に鍵をガチャガチャ開けて入って行く介護は不自然。一人住まいの要介護高齢者や夫婦両方とも要介護者の人が地域包括ケアの最大のターゲット。(第26回)
- 高齢者夫婦と息子、娘世帯が別々に住む傾向が進み、都市だけでなく地方も含めて2005年から2025年までの間に単独世帯、夫婦のみの65歳以上世帯が増えて来る。これらの世帯に対し、どういう介護サービスが必要なのか問題になって来る。これを解決するのが地域包括ケア。(第26回)
- 地方の方が先にニーズが生まれる可能性がある。東京は住宅事情が厳しく、新しく住居を確保するのが困難。一方、都心では交通事情が悪いので、サービス提供は2キロ半径。多くの事業所がサービス提供の在り方として参入するのは意味があるし、それぐらい市場はある。(第26回)
- 地域包括ケアの仕組みは広島県尾道市(旧御調町)など先進モデルがあり、国は地域の先進モデルを参考にしている。現実に簡単ではないのは誰もが考えても分かる。各自治体のモデルを作っていかないと、全国一律に同じ24時間サービスを提供するのは難しい。(第26回)
- 現在の夜間訪問介護に対するニーズは高くない。「入って来られたら困る」という事情に加えて、介護報酬単価が高いのでそれを使うと昼間のサービスが薄くなってしまう。夜間の訪問介護員は時間単価が高いためだ。(第26回)
- ニーズは少ないけど、人件費は掛かるので、利益はどうなるのか。女性のヘルパーが一人で夜中に行くのは危険があるし、夜間は賃金が上がる。「介護報酬を上げないぞ」と言っていたら人が来ない。夜間が働く人は多くない。昼間でも集まらないから夜間はリスクが伴う。(第26回)
- 土地所有者が銀行から金を借りて建物を建てて、20年間一括借り上げた不動産会社が高齢者に部屋を賃貸する方法が一般的。サービス付き高齢者住宅は2015年度までに4倍増。入居を待っている高齢者が42万人。サービス付き高齢者住宅の供給過多になりかねない。(第26回)
- サービス付き高齢者住宅が供給過剰になりながらも定期巡回型随時訪問介護看護が住宅に付随する重要なサービスになり得る。(第26回)
- 地域包括ケアでは在宅医療の診療報酬が重要なポイントになる。在宅医療の診療報酬が高目に設定されているが、現実に上手く行っていない。今まで通りに報酬を高目に設定することで、介護会社と在宅医療がネットワークを組めば地域包括ケアが「絵に描いた餅」ではなくなる。(第26回)
- 定期巡回型随時訪問看護介護サービスについて自治体と話した所、「以前からかかりつけ医制度を整えており、24時間巡回とともに在宅医療と連携するサービスは困る」と言われた。ただ、かかりつけ医とは全く違う。新しい在宅医療の知識を広めることが地域包括ケアに重要。(第26回)
- 在宅医療の先生が複数で複数の診療科目を提供する取り組みも始まっている。連携する訪問看護ステーション、介護事業所と情報をやり取りする中で、医療的なサービスの状況について相応しい介護サービスを提供する仕組みが今後の地域包括ケアで重要なポイントになる。(第26回)
- 在宅医療は多少なりとも必要な部分はある。ただ、本当に重度になってから在宅医療を使うのは殆ど難しい。要介護2~3の状態で在宅医療を利用し、患者が医者と信頼関係が築ければ、信頼される医者の元で重度になっても在宅の生活を初めて続行できる。(第26回)
- 介護職員が痰の吸引をできるようになり、研修を何十時間も受けなければならない。介護福祉士が専門福祉士になると、安い給料のまま同じ業務をやるのは難しいので、介護報酬が上がって来る。しかし、そんなに介護報酬が上がると国は見込んでいないので、現実的にできるのか。(第26回)
- 定期巡回型随時訪問介護看護は必ずできる。新しいサービスは既存の方々にとってプラス面がない部分があるが、介護の業界は準市場。必ずイノベーションで新しいサービスを創造することは必要であり、定期巡回型随時訪問介護看護は一つのイノベーションになり得る。(第26回)
- 指定訪問介護サービスを提供している有料老人ホームが増えており、今回の定期巡回型随時訪問介護看護の認知が増えて来る。(第26回)
- 定期巡回型随時訪問介護看護は1)ケアマネジメント2)共同マネジメント3)継続的マネジメント―が必須。1)はケアマネージャーがケアプランを作り、包括払いで多様なサービスを提供。2)は関係者が情報を共有し、24時間365日のケアを提供。3)は医学的な観点で支援。(第26回)
- 共同マネジメントは看護師、サービス提供責任者が24時間365日の生活の様子をケアマネージャーに伝達し、3人が同等の情報量を持つシステム。ICTが進化している中、ケアマネと介護員、生活相談員、看護師がほぼ同等の情報を持てる状況になりつつある。(第26回)
- 今の介護サービスで行き届かない部分を包括的に提供する仕組みが必要。特に在宅医療は今のシステムでは機能しづらいので、補完するのが地域包括ケアの考え方(第27回)
- 利用者の暮らしを考えた時、色んな私費サービスを内包させる必要があり、特別養護老人ホームなどに入所しなくても在宅で生活できるのではないかという考え方から地域包括ケアが生まれた。(第27回)
- 介護療養病床廃止の受け皿として考えられたのが地域包括ケア。利用者にとってはライフラインとしての介護を明日から提供しないということは非常に問題。電気、ガス、水道が突然ある日止まるのと同じ。違うシステムに置き換えて行くのは難しく、廃止方針が延期された。(第27回)
- 幾ら在宅シフトを唱えても、介護報酬は在宅に流れず、結局は在宅介護が縮小する。しかし、施設介護を継続すると、社会保障費の増大に歯止めが掛からない。独居かつ重度の高齢者も、在宅介護で自立支援をサポートできる体制が必要。それが地域包括ケア。(第27回)
- 地域包括ケアを実現する上で、定期巡回随時対応型訪問介護看護が重要だ。国が提案しているケアプランの在り方としては、上位にケアマネジメントがあり、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与などのサービスが利用できる。(第27回)
- 定期巡回随時対応型訪問介護看護ではサービス提供責任者との連携(共同マネジメント)、5~10分の短時間随時対応、私費による生活支援サービスの提供、在宅医療
- 訪問看護との連携(継続的マネジメント)、高齢者地域居住支援が重要。(第27回)
- 短時間対応の利用者として、▽直接介護は必要なくても不安に思った人▽認知症を持っており、1日3~4回生活を見に行かなければならない人▽トイレに介助が必要な人―などが一例。5~10分提供することで生活全体を見守る。生活援助サービスとの組み合わせが重要。(第27回)
- 介護保険外の全額私費で負担する生活支援サービスの関係では見守り、生活相談、配食、ケアコール、アクティビティプログラム、金銭管理(金銭立替サービス)、地域交流、泊まり通いのサービスなどが想定される。(第27回)
- 定期巡回サービスの介護報酬が包括払いになれば可能になる。包括払いの定額制になると、自由度が高い。(第27回)
- 在宅診療所や訪問看護ステーション、近隣医療機関との連携も期待され、医療依存度が高くて今までは入院しないと駄目だった方々も、各種機関との連携によって自宅で住まいを継続できる。(第27回)
- 地域包括ケアの実現には1)ケアマネジメント 2)共同マネジメント 3)継続的マネジメントが重要。(第27回)
- 具体的には1)は定期巡回を位置付けて良い事業者を選んでケアマネジャーがケアプランを作る。2)はサービス提供責任者がITを活用し、ケアマネらと情報を共有しながら介護サービスを提供。3)は医学的な観点から利用者の状況変化を確認し、医療介護サービスを提供。(第27回)
- 「かかりつけ医」は継続的ではない。地域包括ケアでは医師が定期継続的に医学管理を在宅で行うサービスに基づいて、医者と介護事業者が連携して支援する。要介護が軽度の時から医者と信頼を構築し、重度になった時にも住めるような仕組みを作って行く必要がある。(第27回)
- 定期巡回で想定されるのは、▽家族が病気になった時に泊まる▽生活リハビリを兼ねて高齢者を事業所で預かって日帰りで帰って貰う▽地域交流や他世代交流を提供する▽生活援助給付が整っていない人に食事を介護職が持って行く▽痰の吸引、経管栄養―などのサービス。(第27回)
- 病院、在宅医、専門往診医、介護事業所、訪問看護、ケアマネージャーが相互にサポートする体制が目標。在宅療養支援診療所やケアマネが連携し、継続的な居住を支える。在宅医療や生活支援サービス、私費サービスも包括払いで提供する中で、地域包括ケアが支えられるべきだ。(第27回)
- 住み慣れた土地で老いつつ、介護サービスのサポートなどを継続する上で、サービス付き高齢者住宅の存在が重要。高齢者が地域で住むことを促す意味で、高齢者の居住支援の制度を同時に整備して行くことで、当初考えられている地域包括ケアが発展する可能性がある。(第27回)
- 民間の金を使って土地所有者にサービス付き高齢者住宅を建てて、国の税金を余り使わず、特養などと同様の施設を造って、自宅で介護サービスを受け入れられるシステムを作る。居住者だけでなく地域の利用者に介護を提供する仕組みが想定される。(第27回)
- サービス付き高齢者住宅に付属させるのは介護保険適用の対象外。こうした仕組みがもう少し拡大すると、本格的に地域居住が進む。(第27回)
- サービス付き高齢者住宅に新品は不要。空室率の高い建物を借り上げて保証人がいない高齢者に貸す事業が東京でも始まっている。バブル時の社員寮も改修するケースも。サービス提供者はNPO。安否確認、生活相談、見守り、配食、トラブル対応などもサービスを行う。(第27回)
- 集団居住で一つの部屋に何人も暮らさせて、生活保護給付を当てにして大きな利益を生む事業者も多い。キチンと志を持ってやっている人もいるので、貧困者ビジネスがない形の中で、サービス付き高齢者住宅のシステムが動いて行くことが必要。(第27回)
- 「療養病床や特養は金が掛かる」となると、新築のサービス付き高齢者住宅に民間資源を投入するべき。空室を使って住居を確保する、あるいは若い頃に買った住宅で長く住める形の仕組みを作り、幅広く生活を支える。そういう仕組みこそが地域包括ケアに必要。(第27回)
- 近くオープンさせるサービス付き高齢者住宅はインスリン、バルーンカテテール、在宅酸素などが必要な高齢者も受け入れることを想定している。医療依存度が高い利用者も定期巡回随時対応型訪問介護看護、在宅医療と連携し、自宅でサービスが提供できる。(第27回)
- 現状は少ないが、来年の法改正以降に、こういった施設は広がって行く。補助金制度もあるので5年で大変多くの物が建って来る。リーズナブルな価格で利用できる環境が競争原理の中で整って来る。(第27回)
- 古い施設は5階建てでエレベーターが付いておらず、高齢者が外出するのは大きなバリアになる。しかし、高層階に住んでもエレベーターがある限り、問題がない。現状の建築物は高齢者に住みやすい形になっている。(第27回)
- 24時間訪問介護看護は夜間早朝夕方の利用がメイン。要介護度4~5の方が7割以上占めている。しかし、単位数ギリギリで利用している人が殆どなので、巡回型の訪問介護を利用すると単位費用が増えてしまって、利用を差し控えてしまう。(第28回)
- 24時間訪問介護看護の業務実態として、21人のスタッフが巡回するルートを設定しており、一日中派遣している。前月の中旬か下旬にはスケジュールを組んでおり、訪問世帯が1日5~6軒も続くと腰が痛くなるため、スタッフの健康管理に留意している。(第28回)
- 痰の吸引解禁に関して、医療連携先に関しては色々と指導を頂くことが多い。医療、介護で手を組みながら、態勢が上手く行けるのではないか。「介護の先に医療がある」というデンマークみたいな考え方になれればという思いはある。(第28回)
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