サービス付き高齢者向け住宅/有料老人ホーム、特養・老健の現状と展望
- 名古屋で作った自立型シニアハウスの入居者が高齢化して生活支援が必要になり、管理人の立場を越えてスタッフを常駐させるようになった。「生活コーディネーター」と呼んで重視しており、サービス付き高齢者向け住宅の基本サービスを担う人に近い存在。(第41回)
- 1990年頃からサービス提供の拠点を建てて自立、介護向け住宅を周辺に造る事業を進めている。食堂、風呂のほか、テナントとして薬局、デイサービスなどの事業所が入っている。地域包括ケアの先取り事業。(第41回)
- 1999年から要介護者、自立者向け部屋を一つの建物で併設している住宅を建設し、2007年に複合型小規模多ニーズ対応型住宅を整備し、賃貸住宅、介護保険事業、グループホーム、小規模多機能型居宅介護事業を併設した。(第41回)
- 2009年に千葉県船橋市の都市再生機構団地に整備した住宅では、自立型、介護型の高齢者住宅に加えて、グループホームや小規模多機能型居宅介護施設を併設しており、サービス付き高齢者向け住宅の法制度を作る中では、国が参考にした。(第41回)
- 会社は住宅事業者であり、介護事業者ではない。多世代交流で、高齢者が安心して住めるというキーワードを掲げており、都市再生機構、自治体の住宅供給公社に接点がある。入居当初は住宅だけど、時間が経ったら必ず介護が必要になる。(第41回)
- 特別養護老人ホーム(特養)などの基本コンセプトは一時的に要介護となった人を社会に戻していく事業。有料老人ホームは死ぬまでの住まいを提供する。建設に税金が入っておらず、全部自己資金。その分だけ介護3施設に比べて入居費用が高い。(第41回)
- 特養では部屋の入口に入るとトイレや洗面が設置され、その奥に介護ベットがある間取りが多いが、全入居者約1800人のうち、特養と同じタイプは約500人。1100人ぐらいが普通の住宅と同じ間取り。(第41回)
- 一般住宅との違いと言えば、有料老人ホームにはスプリンクラーや緊急通報を知らせるスピーカーやマイク、緊急通報のボタンなどが備え付けられており、車椅子の人が住むことを想定しているため、出入口や浴槽、トイレの仕切りは全て引き戸。(第41回)
- 入居者の要件は60歳以上が一般的。誰でも入れる多い一般のマンションと違う。(第41回)
- 老人ホーム入居者の平均年齢は自立型で80歳、介護型で85歳。しかし、入居者の年齢層グラフを作ると、なだからになる。事情があって「少し割り増しになっても良いから」という若年の人がいる。(第41回)
- サービス提供の際、利用者の年齢が30歳違うのは日常業務の中で問題となる課題。入居者同士の助け合いはある。世代の幅広いのは当然だし、ある程度年の近い人の方が話しやすく安心感がある。(第41回)
- 看護師には高年齢が多く、70歳代もいる。生活コーディネーターは40歳、50歳で大変良い仕事ができるようになる。ヘルパーは65歳ぐらいまで普通に働いている。(第41回)
- 自立型に生活コーディネーターが詰めており、夜中は寝ているけど、何か緊急事態が起きて救急車を呼ぶ仕事。60歳以上の人が結構勤めている。(第41回)
- 高齢者向け住宅全般はニーズが増えているが、需給が成立するかどうか。(第41回)
- サービス付き高齢者向け住宅制度には?高齢者専用賃貸住宅の見直し?特養との線引き問題を解消―という側面がある。(第41回)
- 前者はサービス内容が明確ではなく、基準も粗い感じだった。ある程度同じ土俵に乗せて、基準を定めてサービス内容の最低線を定める。高専賃の置き換わりという登録制度という側面。(第41回)
- 後者は住宅=国土交通省、介護=厚生労働省と担当が異なる。厚労省は住まいに踏み込んで有料老人ホームをやるのは不自然。国交省はシニア住宅など色々と制度をやるが、サービスがはっきりしない。包括的な名称という意味合いを感じる。(第41回)
- 「何処まで行っても「有料老人ホームと介護施設は別」という制度は使う人にとって不便。(第41回)
- 高専賃の時から目的として、1.介護保険に頼らない時間を長くする住宅という考え方 2.「適合高専賃」という特定施設に代わる介護事業とししての意味合い 3.特養待ちの解消―という3つの目的が混在している。(第41回)
- 1.は元気じゃなくなるけど、同世代同士で寄り添って暮らして、軽い賄いの人が必要な住宅に住むことで、プライバシーを守りながら共助、自立で助け合う。介護保険に頼らない時間が延びる。介護が必要になっても終の棲家としての機能が準備されているという考え方。(第41回)
- 2.は有料老人ホームの設置が都道府県の判断で総量規制されているので、その穴埋めという考え方。3.は「特養待機者が減らないから」というキャッチフレーズ。社会のセーフティーネットが足らないから造るという意味合い。(第41回)
- サービスの在り方について話が整理される中で、サービスを使っている人にキチンと話が伝わることが大事。社会福祉法人はセーフティ-ネットの使命を持っており、株式会社は老後の幅を広げて多様性を並べる使命がある。ここを住み分けなければならない。(第41回)
- 特養と有料老人ホームを明確に分ければ、産業としてあるべきところと、税金として行政サービスとしてあるべきところに分かれる。特養は全て税金、有料老人ホームは民間資金。「特養は安いけど満員で入れないので、有料老人ホームに」と言うが、同じところで並べるべきなのか。(第41回)
- 有料老人ホームは特養の補完ではない。片方はセーフティーネット、片方は自ら選択する終の棲家。何で同じところで比べるのか。特養は税金で安くしているだけ。全部税金で対応するのは有り得ない。(第41回)
- 民間がサービスを主導する状態が必要。今度の介護保険法改正で新しいサービスができるが、たくさんあった方が良い。人によって介護の状況は違うし、単純に優劣比較するのではなく、色々なサービスが出てくるような後押ししくれれば良い。(第41回)
- 費用の目安としては、入居の権利を買い取る有料老人ホームの場合、一時入居金は自立型で3000万円前後、介護型で1500万円前後。坪単価は自立型で200~250万円ぐらい。介護型は200~230万円。亡くなるまで住み続ける権利を買い取った形になる。(第41回)
- 入居後の費用としては、24時間フロントに人が詰めているので、管理費として9~10万円。食費、介護費用なども必要となるため、毎月の負担額は自立型で12~16万円で、厚生年金を意識した金額。(第41回)
- 介護型は18~25万円。要介護度が重くなり、自立型から介護型に住み替える目安は要介護3ぐらい。24時間の人手がないと生活が難しくなって来る切れ目。そこまでは自立型。どうしても自立型に住みつつ介護保険を使いたかったら誰か事業者を紹介する。(第41回)
- 自立型の場合、食費は半分ぐらい。入居者が外食を楽しんだり、家で料理を作ったりすることが理由。水道代、電気代、電話料金は自己負担だが、自立型は介護保険を使わなくても何とかなるので、介護保険利用者は入居者の2割ぐらい。平均請求額は約14万円。(第41回)
- 有料老人ホームは住居の延長。介護型は万が一の押さえ。「介護を必要とする期間は)グッと短くする方が安心ですよね」と提案している。(第41回)
- 現在は戦後世代がトップバッターで入居しており、焼け野原から高度成長を経験した人生だから個人資産を相当持っている。しかし、団塊世代は資産のある人とない人の差が出て来るので、賃貸に注目が高まる。(第41回)
- 賃貸の場合、入居時に掛かるのは敷金で、目安は家賃の2倍程度。毎月の家賃としては自立型で6万500円~11万4000円、介護型が6万5000~7万円。サービスが軽くなるため、管理費は有料老人ホームに比べると半分程度に安くなるが、1万5000円の共益費が掛かる。(第41回)
- 介護型はプラスアルファの負担という曲者がある。包括サービスなんで多少のことはやる。介護保険の上限を超えると全額自己負担になるが、頭金の負担は軽い。(第41回)
- 毎月の負担額は変わらないが、有料老人ホームは契約した時に全部払うから何らかのアクシデントで会社が危機にならない限り、最後まで家賃負担が出て来ない。一方、賃貸型は何歳まで生きるか分からない間、家賃を払い続ける。これをどう見るか大きなニーズの分かれ道。(第41回)
- 賃貸型は何処までも判断を求められるので、「預けちゃうのは嫌だ。選ぶ方がいい」「最後まで請求書を見たい」という人のニーズ。有料老人ホームは「全部頼んだという方がいい」という人。ニーズは両方あるので両方必要。(第41回)
- 賃貸に期待が大きいが、トータルから見た負担の多寡は微妙。どっちかしかやらない会社が多いが、うちは両方やっているし、両方やって行く。エリアの中で選択肢をたくさん作って行くのが民間のやる地域包括ケアの姿。ニーズは増えて行くので選択肢を提供する。(第41回)
- 老人保健施設(老健)と特養は特性が違う。特養は基本的に終の棲家。入ったら一生死ぬまで入居する。老健の目的は在宅復帰。急性期疾患が直った後、在宅復帰するまでのリハビリ施設。病院から在宅に繋ぐ中間施設。(第42回)
- 病院が併設されている老健が多いが、特養と老健を併設しているので、病院のないところからゲストを受け入れている。経営運営面では厳しい面もある。(第42回)
- 自宅に帰れない人向けに介護療養病院があるが、政府は減らすと言っているので、老健への移行を決めている最中。認知症に強い老健とか、リハビリが強いとか、在宅復帰に強いとか、強みを特化させて展開させるのが望ましい。(第42回)
- 特養は多床部屋から個室あるいはユニット型に移行しつつあり、新型特養であれば報酬はそれなりにするが、在来型、多床対応の特養は減算される。個室を造る方が高コストになるが、個人の尊厳尊重を考えると、プライバシーを確保できる個室の方が良い。(第42回)
- 特養の機械浴は慌しい。利用者が風呂の前に並び、「中介助」「外介助」と職員も分かれて流れ作業で脱いで貰う。1分単位で多くの人を入浴させる意識。流れ作業的な入浴を疑問に思っていた。コミュニケーションや温もりを感じられる風呂をやりたいと思った。(第44回)
- 新型ユニットケアの特養は家庭サイズの風呂をユニット型に入れるのが主流。それを補足する形でフロアや施設ごとに機械浴を入れる所が多い。ユニットケアで家庭的な風呂に入って貰っており、そこから機械浴の廃止を学んだ。(第44回)
- 機械浴の廃止に時間が掛かった。試験的に始めるなど段々と3~4年掛けた。機械浴をやっていた時の介護職の意識や利用者の表情が良くない。ヒノキみたいな小さい浴槽を上手く活用すれば、どんなに重度な人でも技術をしっかり使えば安心して入って頂ける。職員も却って楽。(第44回)
- 機械浴は風呂に入る感じじゃない。いすに座ったまま入る機械なので、乗っている方からすると怖がる。しかし、個浴は利用者の反応が違う。「綺麗になった」「温泉みたいな所に来られて幸せ」という反応。普段から入っていた風呂で安心する。(第44回)"
- 湯船の温度も利用者の好みで変更しており、湯船に入ってどれぐらいで出るか自分で決められる、家庭浴槽になると介護の作業は大変。利用者が自分でやらなければいけないことはあるし、足を下に付けられる人は付いて頂いたり、風呂の縁で力を入れて踏ん張って頂いたりすることがある。(第44回)
- 特養に入ると自分でしたいこととか、特養に入ったら何も言えなくなっちゃう。全部お世話になる。今の利用者世代は遠慮がちなので我慢する。実際に要望を言ってもできないので、ドンドンと閉じこもる悪循環になる。(第44回)
- 利用者のニーズに応じた旅行、外出と風呂の改革を同時進行的にやった結果、「是非要望を言って下さい。それを手伝う役割ですから」と言えるようになる。他人行儀ではなく、人生を賭けて心開いて向き合うことで、信頼関係ができて、今まで我慢していたことが要望として出て来た。(第44回)
- 家族と話せる関係になると、「昔は旅行に行っていたんですよ」「昔の家に住んでいた家に連れて帰りたいんだけど、なかなか自分では連れて帰れない」という意見が出て来る。一連の取り組みを通じて利用者・家族との信頼関係が生まれるようになった。(第44回)
- 要望を聞いて「どうやったらできるか?」を考える。旅行は車や電車に乗るが、「訓練を兼ねて生活リハビリで風呂に入りましょう」と言える。単に「健康のために食べて下さい」ではなく、自身の心が動けば体が動く。特養に住んでも我慢せず、自分の希望を言える好循環に結び付く。(第44回)
- 特養は自宅復帰の理念はあるが、現実は終の棲家。近年は看取り介護、ターミナルケアに力を入れている。今まで最期を迎えるのは病院。ギリギリまで手伝いさせて頂いたが、最期は付き添いできなかったので、何となく不全感があった。(第44回)
- セーフティーネットとしての特養のキャパシティは足りないし、「団塊世代のために考えろ」と言うけど、特養を利用するのは何年後か。特養じゃない次の行き先のメニューを今、考えないといけない。(第45回)
- 介護保険導入前の施設は修繕費を入居費で賄うことを想定していない。社会福祉法人は儲けちゃダメ。予算を使い切ることを強いていたのに、修繕費を本気でやったら兆円単位のカネが必要。50年以上使うとしたら、ある程度修繕しないと。介護事業に参入した当時とはプライバシーの考え方も違う。(第45回)
- 社会福祉法人が持つ1兆円程度の内部留保については、「あいつら儲かっている」という批判があるが、儲かっているんじゃなくて怖くて使えない。修繕費の財源は何処にあるんですか。国が補助金メニューを無くした分は取っておかなきゃ行けない。(第45回)
- 家庭の金で言うと内部留保はヘソクリや貯金。「ここに何十万円を持っているじゃないか。今月は給料を要らないだろう」と言われちゃう。使い道を考えているのにそれを聞かず、「あんな所に持っていますよ」と公表すると、とても大きな金額に見える。(第45回)
- 低所得者対策について、行政から「国、県、市で面倒見ますから、この金額だけで居住費は抑えて下さい」と言われる。しかし、自治体負担の総額100%にならない部分は施設負担。改善を訴えると、自治体から税金を払っていない点を理由に反論される。(第45回)
- 一方的な負担を強いられるのであれば税金を払ってもいい。「税金を払わないんだから、これだけやれ」「社会福祉法人だからこれだけやれ」という論理が多過ぎる。この状態が続くと低所得者の入居は難しくなる。(第45回)
- 福祉業界は心根の優しい方が多い。コスト意識をどう持って貰うか、顧客満足をキチンとしなきゃならない。介護保険でカバーされない部分で何ができるのか、自分達の強みを見続けなければマネジメントできない。(第45回)
- 今までマネジメントするなと言われていた。突然「マネジメントしろ」と言われて、どうすれば良いのか。急にハンドルは切れないという意識が業界にずっとあった。(第45回)
- マネジメントできる所まで良かったが、サービスからこぼれ落ちる人が出るので、競争に負けた社会福祉法人は居住者の行く末を考えなければならない。(第45回)
- 今の内部留保を食い潰して「修繕のカネは?」と聞いても「それは知りません」と言われると困る。民間ができない部分を社会福祉法人がやっていかなきゃならない。(第45回)
- 社会福祉法人でも生産効率を上げる努力は必要。介護施設は中小企業なので、無理な競争をし始めて価格競争しても、お互いに苦しめるだけ。自分達の価値を下げる意味は無い。中小企業としてこれだけのことを提供するので、これだけしましょうという対応が必要。(第45回)
- 社会福祉法人は措置時代から鵜飼いの鵜。国が飼い殺しのようなことをやっていた。言うことを聞いていた鵜が鵜匠に噛み付くとしても、何処で噛み付いたら良いか分からない。(第45回)
- パフォーマンスの仕方が分からず、良しと思っていない。黙って何かをしているのが美徳という雰囲気。国からは「噛み付いたらいいんですか?」「財産を分捕る資格まで持っています」「社会福祉法人がダメになったら搾取する」と言われている。(第45回)
- 1980年頃から寝たきり高齢者が問題となり、「老人訪問看護ステーション制度」が1992年にスタートした。その後、子どもや成人を対象に健康保険も使えるようになり、全国で5400カ所に拡大した。(第46回)
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