東京財団政策研究所「経済政策・経済思想ユニット」では、2020年9月12日、東京財団政策研究所の猪野明生リサーチアシスタントによる企画立案のもと、経済学観点での新型コロナウイルス研究に関する情報共有と議論を研究者間で行う「新型コロナウイルスと政策:経済学者によるワークショップ」を開催した。
新型コロナウイルスに関する報道の多くでは現状の感染者数に焦点が当たりがちになり、これまでを振り返り新型コロナウイルスが人や企業の行動や経済活動にどのような影響を与え、またそれに対する政策が効果的であったのか、といった観点からの発信はあまり多くなかった。そんな現状を踏まえて実施した本ワークショップの発表や議論が、今後の本分野での研究や政策議論の発展を目的に、ワークショップ内の発表や参加者による活発な議論の様子を動画で公開する。
ご挨拶(小林慶一郎 東京財団政策研究所研究主幹)
「コンタクトトレーシングアプリがもたらす効果の定量分析」
千葉安佐子(東京財団政策研究ポスト・ドクトラル・フェロー)
千葉研究員は、接触追跡アプリについて、なぜ感染抑制の効果を持つのか、効果を持つとしたらどのような条件が必要かについて、濃厚接触者が隔離されるFraser型アプリと濃厚接触者は検査を受けた後に陽性であれば入院する日本型アプリとに分け、エージェントベースモデルを用いた分析結果を報告した。
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「Non-Pharmaceutical Interventions, Teleworkability, and Involuntary Job Separations」
笠原博幸(ブリティッシュコロンビア大学経済学部教授)
笠原教授は、県ごとの政策変化のタイミングの違いを利用し、強制的でないロックダウンが人々の動態、またそれを通じた感染者数の変化についての分析結果を報告した。また、その分析結果から、失業と感染増の間に存在するトレードオフの大きさについて、短期と長期それぞれの分析を行った。
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「Small Business under the COVID-19 Crisis: Expected Short- and Medium-Run Effects of Anti-Contagion and Economic Policies」
川口康平(香港科技大学商学院経済学部助理教授)
川口教授は、小規模企業を対象とした独自のサーベイ調査により、新型コロナウイルスとそれに対する緊急事態宣言や持続化給付金、雇用調整助成金といった政策が小規模企業へどのような影響を与えたかについての分析結果を報告した。
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「Firm Exit during the Covid 19 Pandemic: Evidence from Japan(コロナ禍における企業退出)」
宮川大介(一橋大学経営管理研究科経営管理専攻 准教授)
宮川教授は、東京商工リサーチのデータベースを用いて企業退出の構造モデルを構築し、何の対策もなされなかった場合の企業の退出数と実際の退出数を比較した。また、その結果に基づき、ショックを完全に相殺するにはどの程度の規模の補助を行えばいいかの分析を報告した。
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フリーディスカッション
小林慶一郎 東京財団政策研究所 研究主幹によるモデレーションのもと、登壇者によるフリーディスカッションが行われました。