東京財団政策研究所ウェビナー(Webinar)の第5弾は、世界が注目する米中新冷戦下の日米中関係をテーマに扱う。
米中対立がエスカレートし、コロナ禍が続くなか、安倍前首相の突然の辞任により、内閣総理大臣に就任した菅新首相。日本の政界が変化する中、アメリカでは11月に先が読めない大統領選挙を控えている。こうしたなかで、中国の習近平政権は強権政治を続けており、国際社会にとって深刻な不安要因になっている。
このような国際情勢の重要な節目を迎えている今、「ポスト安倍政権の日米中関係のあり方」をテーマに有識者を招き、米中新冷戦の行方、今後の日米中関係の方向性および日本の国際戦略についてオンラインライブイベント内で議論いたしました。
[2020 年 10月15日開催]
東京財団政策研究所ウェビナー「ポスト安倍政権の日米中関係のあり方」
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CHAPTER 0:「開会挨拶/登壇者紹介:ポスト安倍政権の日米中関係のあり方」[7:19]
安西祐一郎 東京財団政策研究所 常務理事
内木場重人 新潮社フォーサイト編集長(モデレーター)
CHAPTER 1:「中国の台頭と国際社会」[11:39]
高原明生 東京財団政策研究所 上席研究員/東京大学公共政策大学院 教授(スピーカー)
CHAPTER 2:「ビジネスパートナーとしての日中関係」[14:14]
佐々木伸彦 日本貿易振興機構理事長(スピーカー)
CHAPTER 3:「米大統領選と米中関係」[17:37]
ジョセフ・クラフト 米国経済・政治アナリスト/ロールシャッハ・アドバイザリー株式会社代表(スピーカー)
CHAPTER 4:「欧州から見た米中対立」[18:06]
伊藤錬 株式会社メルカリ執行役員/ニューヨーク大学ロースクールシニアフェロー(スピーカー)
CHAPTER 4:「中国経済のサステナビリティ」[11:49]
柯隆 東京財団政策研究所 主席研究員(スピーカー)
CHAPTER 5:「ディスカッション:ポスト安倍政権の日米中関係のあり方」[42:48]
内木場重人 (モデレーター)
高原明生 佐々木伸彦 ジョセフ・クラフト 伊藤錬 柯隆 (パネリスト)
動画配信
開催挨拶/登壇者紹介「ポスト安倍政権の日米中関係のあり方」
現在、米中関係は悪化の一途をたどっている。米中の新冷戦とも言われ世界中が注目する米中関係は日本にも重要な影響を及ぼすだろう。安倍総理退陣後の日米中関係を時に欧州からの視点を交え、議論すべく柯隆主席研究員の企画により、本ウェビナーが実現することとなった。東京財団政策研究所の安西常務理事による挨拶とモデレーターを務める新潮社フォーサイト編集長の内木場重人氏の進行により、本ウェビナー登壇者である有識者たちを紹介する。
「中国の台頭と国際社会」
中国の台頭は誰が見ても疑いようのない事実であるが、それに対し国際社会はどのように評価し、どのように対応しているのだろうか。近年、先進工業国から見た中国へ評価は軒並み低評価であるという世論調査や、新疆・香港についての問題を取り巻く各国の声明などを交えて解説していく。様々な面における中国への評価・対応は先進工業国と途上国とで分断が見られ各国の違いもある中で、国際社会は中国に対して今後どのように対応していくべきなのか。東京財団政策研究所上席研究員の高原明生氏が掘り下げる。
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「ビジネスパートナーとしての日中関係」
日本企業の対中ビジネスの現状や、今後のビジネス戦略について日本貿易振興機構(JETRO)が進めているアンケート調査を参考に、ビジネスパートナーとしての日中関係の今後を見通す。日本の直接投資収益率や日本企業の海外現地法人売上高などのデータを見ると、日本企業にとって、ビジネス展開先としての中国の存在感は圧倒的である。また、OECDの最新経済見通しでは、中国はG20の中で唯一2020年にプラス成長が見込まれるという結果が出ている。現在、日本企業の中長期的な対中投資スタンスは変化させないという声が多い中ではあるが、対中国経済依存のリスクを分散させる術はあるのか。日本貿易振興機構理事長である佐々木伸彦氏が様々なデータを用いて解説する。
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「米大統領選と米中関係」
無数のシナリオがあると言われている米大統領選の勝敗結果。その結果を左右する一つの要素は「投票率」であるが、世論調査の盲点や浮動要素とされる「回答者比率・構成」「隠れトランプ票」「進歩派(左派)・若年層票」「極右派票(Qアノン等)」を解説し、不確かな世論調査よりも選挙予測に強い影響力を持つ「献金額」や「手元資金」の分析から米大統領選の行方を予測する。米中関係においては、アメリカの主だった対中安全保障指針を紐解き、現在のアメリカによる対中強硬姿勢の背景となる貿易・経済問題からイデオロギー闘争へと深刻化する対立が世界に与える影響をロールシャッハ・アドバイザリー株式会社代表取締役のジョセフ・クラフト氏が論じる。
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「欧州から見た米中対立」
日米中のトライアングル関係を考えていくのにあたり、「欧中米」の関係性や欧州から見た米中といった視点を用いることで、日米中の課題や今後の展望への問題提起をしていく。欧州からの視点として、テクノロジー分野が経済に大きな影響を与える昨今の状況に鑑み、欧州でのテクノロジー分野に対する様々な意思決定や当該分野における欧州の米国や中国を見る目を紹介する。欧州の米中アプローチは、どうやってアメリカを繋ぎ止めつつ、中国との関係をマネージしていくかという、長期的にバランスするような方法を追求しているといえる。このような欧州的アプローチには、日本との親和性や日本が今後の米中関係をどのように構築していくのかにあたっての示唆を受けることができるのではないだろうか。ロンドン在住の株式会社メルカリ執行役員である伊藤錬氏が解説する。
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「中国経済のサステナビリティ」
中国の政策決定には透明性がないと言われるが、中国の政策のトレンドを探るひとつの手法に、全国人民代表大会で行われる政府活動報告の分析がある。当該報告書で最も言及された「言葉の回数」を分析することで中国の政策方針を紐解くことができるのだ。そのような分析結果や、中国の実質GDP、中国都市調査失業率など様々なデータと東京財団政策研究所主席研究員である柯隆氏の中国についての知見を掛け合わせ、現在の中国経済・雇用の実態を明らかにする。また、中国は内需依存の経済成長に切り替えていこうとしているが、グローバルサプライチェーンが再編されるなか、雇用情勢はいっそう深刻化する恐れがあるという。世界主要国による対中包囲網ができつつある今、中国は対日関係を改善し、対中包囲網の突破口とする方針を取るのだろうか。データだけでは分からない、中国内政や中国経済の実態を鋭く分析する。
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「ディスカッション:ポスト安倍政権の日米中関係」
内木場氏による進行のもと、下記のような多様な問いに対し、登壇メンバーがそれぞれの専門的知見に基づき議論する。
・中国にとって、トランプとバイデンではどちらの候補のが望ましいか
・バイデン政権になった場合に、中国の日本に対するアクションに変化はあるのか
・日本は米中関係を仲介できるのか
・仲介役としての日本に対し、欧州は何を期待しているのか
・今後グローバルサプライチェーンはどう再編されるのか
・サプライチェーンの最適化に向け、日本企業が打つべき先手とは
・習近平政権は長期化するのか
・米国、欧州は菅政権をどのように見ているのか
・インド太平洋構想について欧州はどのように見ているのか
・菅政権は今後の対中戦略をどのように構築するべきか
・中国で共産党に代わるプレーヤーは台頭してくるのか
・中国における一国二制度は今後どうなるのか
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<東京財団政策研究所ウェビナー(Webinar)の開催にあたって>
東京財団政策研究所では従来から、総計100回以上に及ぶ東京財団政策研究所フォーラム、各種公開研究会などの開催を通じて、カンファレンス・セミナー形式での政策研究成果の発信、参加者との相互交流などに努めてまいりました。この度、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡がりを受けて多人数での集いが制約される中、東京財団政策研究所は新たにウェビナー(Webinar)を開催していくことといたしました。ウェビナーとはウェブ(Web)とセミナー(Seminar)を組み合わせた造語で、数年前から米国を中心に拡がってきた試みです。
私たちは、このウェビナーを当座しのぎのものとは考えていません。従来型のカンファレンスやセミナーの制約された代用品にするつもりもありません。即時性、双方向性などウェブならではの特長を生かし、時代の変化に合わせた新しい形の政策論議、知的交流の場として、今後、発展させていきたいと考えています。当初は不慣れゆえの試行錯誤もあるかと思いますが、そこはご寛容いただきつつ、末永くお付き合いいただきますようお願い申し上げます。