R-2022-048
少子化・人口減少は現代日本が抱える喫緊の政策課題です。日本ではこれまで多くの少子化対策が実施されてきた一方で、現在の出生率は人口再生産基準はおろか、現役世代が実現したいと考えている希望出生率(1.8)にすら回復していません。これに対して、一部の高所得国、特に北欧では近年出生率が回復傾向にあります。日本の出生率は、なぜ低いままで安定しているのでしょうか。本ウェビナーでは、日本の人口問題に関して多くの国際的な業績を挙げている、プリンストン大学のジェームズ・レイモ教授を招き、この問題について解説していただきました。
レイモ教授の講演では、人口学で提唱されている「第二次人口転換論」に言及しつつ、国際比較を通じて日本の人口問題に関する特徴が紹介されました。その中で、結婚と出産が依然として強く結びついているということと、未婚の独身世帯の増加が挙げられ、日本では第二次人口転換が他の諸国に比べて極めてゆっくりと起きていることが指摘されました。さらに、日本は労働市場や家庭におけるジェンダー平等がまだ十分に達成されていない点が、北欧などの相対的に出生率が回復基調にある国と比べて、出生率が低いまま維持されている要因の一つとなっているのではないかとの指摘がありました。講演後、参加者からは多数の質問やコメントが寄せられ、活発な議論が展開されました。
開催概要
■イベントタイトル:「日本の少子化:第二次人口転換論とジェンダー平等の視点から」
■日時:2022年8月29日(月) 14:00~15:30
■実施形態:Zoomウェビナー
■主催:公益財団法人東京財団政策研究所、共催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
■登壇者:
James M. Raymo プリンストン大学教授(講演者)
1995年に大阪市立大学で修士号(経済学)、2000年にミシガン大学でPh.D.(社会学)を取得後、ウィスコンシン大学マディソン校教授を経て現職
打越文弥 プリンストン大学博士候補(モデレーター)
2017年に東京大学で修士号(社会学)を取得後、プリンストン大学博士課程に留学
尾野嘉邦 東京財団政策研究所 研究主幹/早稲田大学教授(総合司会)
2001年に東京大学で修士号(政治学)、2010年にミシガン大学でPh.D.(政治学)を取得後、東北大学教授を経て現職
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▼本研究プログラムについて
「男女共同参画社会の形成と促進につながるエビデンス―世界最先端の研究成果から得られるインプリケーションの紹介と日本での応用を目指して―」