R-2021-078
開催要旨
■テーマ:「転換期の科学技術政策を考える」
■開催日:2022年2月17日(木) 10:00~12:35
■場 所:Zoomウェビナー
■登壇者:
<科学技術政策システムの再構築プログラムメンバー>
城山英明 東京財団政策研究所研究主幹、東京大学大学院法学政治学研究科教授
松尾真紀子 東京財団政策研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任准教授
岸本充生 東京財団政策研究所研究主幹、大阪大学データビリティフロンティア機構教授
鈴木一人 東京財団政策研究所研究主幹、東京大学公共政策大学院教授
黒河昭雄 東京財団政策研究所主任研究員、神奈川県立保健福祉大学イノベーション研究センター研究員/シニアマネージャー
吉岡(小林)徹 東京財団政策研究所主任研究員、一橋大学イノベーション研究センター講師
<ゲストスピーカー>
Kenneth Oye マサチューセッツ工科大学政治学教授
Sébastien Lechevalier フランス国立社会科学高等研究院教授、EHESS日仏財団理事長
【開催報告】
本国際ウェビナーでは、現代の科学技術政策における2つの重要な課題について、幅広い視角から課題をあぶりだすことを試みました。
第1の課題は、分野横断的な協働に関する課題です。例えば科学技術のリスクに対処するためには、様々な種類のリスク、すなわち安全、セキュリティ、倫理等に関するリスクを取り扱わなければならず、俯瞰的な視点が必要となります。そして、このようなリスク管理は情報の不確実性の下で行う必要があり、情報を蓄積しつつ管理を順応的に行うことが求められます。また、リスク管理のために必要な情報共有自体がセキュリティ上のリスクとなるというトレードオフにも対応する必要があります。
このような分野横断的協働は、リスク管理といった規制とともに、社会実装を伴う研究開発にも求められます。そして、分野横断的な協働の担い手をどのように育成していくのかが課題となります。そのためには、多様な専門家、実務家が自然に交流できる空間をボトムアップに構築していくことが重要ではないかといった議論が行われました。
第2の課題は、官民連携、および官民連携の関係を維持する際の課題です。イノベーションにおいては民間部門の役割が確かに重要であるのですが、シリコンバレーにおけるスタートアップ企業の役割といった特定のイメージで全体を語ることの問題が指摘されました。民間部門において、社内ベンチャーが可能な大企業の役割も大きいといえます。また、民間企業同士の協力には、相互の戦略的観点から難しい側面があるとともに、合意形成の正統性確保の観点から様々な妥協を強いられるという限界もあります。そのような観点から、政府の公的役割も重要ではないか、また、そのような政府の適切な役割を踏まえた民間部門の連携メカニズムが必要ではないかという議論が行われるとともに、政府部門の能力育成の必要性も指摘されました。
城山英明
【動画配信】
【当日資料】
・Oye先生発表資料
・松尾先生、城山先生発表資料
・Lechevalier先生発表資料
・吉岡(小林)先生、黒河先生発表資料
【本研究プログラムについて】
「科学技術政策システムの再構築」
【関連Review】
・城山英明
「科学技術政策の再定義-分野間関係、国際関係、官民関係」
・鈴木一人
「新しい科学技術政策と経済安全保障」
・岸本充生
「規制とイノベーションの新しい関係:障害物から推進力へ」
・松尾真紀子
「科学技術・イノベーション政策における時間軸・分野横断性の確保の重要性」
・吉岡(小林)徹
「科学技術・イノベーション政策で「オールジャパン」を強調することの負の側面」
・黒河昭雄
「革新的な製品・サービスに対する新たな規制の導入プロセスに関するケーススタディ ―AI医療機器を事例に(上)」
「革新的な製品・サービスに対する新たな規制の導入プロセスに関するケーススタディ ―AI医療機器を事例に(下)」
・大野元己(リサーチアシスタント)
「中国の創新と新型挙国体制」