R-2022-148
開催要旨
■テーマ:「社会技術システムの移行に向けて
-OECDにおける新たな科学技術イノベーション政策を踏まえて-」
■日 時:2023年3月17日(金) 17:00~19:00
■場 所:Zoomウェビナー
■登壇者:
<東京財団政策研究所 研究プログラム「科学技術政策システムの再構築」メンバー>
城山英明 東京財団政策研究所研究主幹、東京大学大学院法学政治学研究科教授
松尾真紀子 東京財団政策研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任准教授
<ゲストスピーカー>
有本建男 政策研究大学院大学客員教授
Dr. Michael Keenan, Senior Analyst, Directorate for Science, Technology and Innovation, OECD
Dr. David Winickoff, Senior Policy Analyst, Secretary | Working Party on Bio-, Nano-, and Converging Technology (BNCT), OECD
本国際シンポジウムでは、OECD(経済協力開発機構)における新たな科学技術イノベーション政策の検討結果について、OECDの2人の担当者から最新の報告をいただき、それを踏まえて、松尾氏の司会の下、日本を含む各国の現在の科学技術イノベーション政策における課題について、幅広く論じました。
第1の報告は、キーナン氏による「科学技術政策2025:科学、技術、イノベーションによるトランジションの実現」というプログラムに関する報告でした。科学技術政策2025では、気候変動、資源枯渇、生物多様性減少、パンデミック、ウクライナ紛争といった様々な危機対応に向けた社会技術システムの移行を引き起こすために、関係部局とも連携して、これまでの事例を整理するとともに、移行実現のための政策手段のプロトタイプの構築とその実験的実施を目指していることが述べられました。第2の報告は、ウィニコフ氏による「技術ガバナンス」に関する報告でした。技術ガバナンスとは、技術の開発、社会への導入と運営において政治的、経済的、行政的権能を行使するプロセスであり、リスクと便益を管理するための規範やアーキテクチャーによって構成されると定義されます。技術ガバナンスにおいては、いかにして上流段階で様々な懸念事項に対応するのかが課題であるとされ、「脳技術」、「エンジニアリング・バイオロジー」といった新興技術が対象とされていたことが述べられました。
この2つの報告を踏まえ、有本氏からは日本の科学技術イノベーション政策の展開が説明され、特に新型コロナウイルス禍の後の科学技術イノベーション政策の実践における、様々な知識を統合的に統合する者、科学技術イノベーションシステムの様々な関係者を繋ぐ仲介者の重要性が指摘されました。また、城山からは、社会技術システムの移行に向けて多様な関係者を巻き込む必要のある新たな科学技術イノベーション政策においては、現場を持つ各省庁を含む多様な関係者を巻き込むプロセスが重要であること、また、このようなプロセスをマネジメントする能力が重要であることを指摘いたしました。さらに、議論の中では、科学技術イノベーション政策が、社会課題に取り組むというだけではなく、安全保障とも密接に関係してくる中で、科学技術イノベーション政策の「安全保障問題化(securitization)」が進んでいる点にも注意が向けられました。
城山英明
【動画配信】
「社会技術システムの移行に向けて-OECDにおける新たな科学技術イノベーション政策を踏まえて-」
東京財団政策研究所 国際シンポジウム
松尾真紀子 東京財団政策研究所主席研究員
城山英明 東京財団政策研究所研究主幹
有本建男 政策研究大学院大学客員教授
Dr. Michael Keenan, Senior Analyst, Directorate for Science, Technology and Innovation, OECD
Dr. David Winickoff, Senior Policy Analyst, Secretary | Working Party on Bio-, Nano-, and Converging Technology (BNCT), OECD
(左から)松尾主席研究員、城山研究主幹、有本客員教授
【当日資料】
・有本先生ご提供資料
・Dr. Keenanご提供資料
・Dr. Winickoffご提供資料
【本研究プログラムについて】
「科学技術政策システムの再構築」
【関連Review】
・城山英明「OECDにおける新たな科学技術イノベーション政策の検討-社会技術システムの移行に向けて」
・岸本充生「イノベーションに資する規制に向けて―英国とカナダの独立諮問委員会の取り組み」
・鈴木一人「経済安全保障推進法は科学技術政策を変えるか?」
・吉岡(小林)徹「科学技術に関わる国家戦略を経営戦略論から研究する意義」
・大野元己「中国製造2025と政策実験」
・セバスチャン ルシュヴァリエ「イノベーションにおける民間の役割と限界: 理論的洞察とフランス・欧州・日本の視点」