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国土交通省統計問題の第三者委員会が解明したこと及び新たな課題(後編)
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国土交通省統計問題の第三者委員会が解明したこと及び新たな課題(後編)

January 19, 2022

R-2021-036-2

本問題について取り上げた、朝日新聞社「国土交通省による基幹統計の不正をめぐる一連のスクープと関連報道」が、2022年度日本新聞協会賞に選ばれました。

▼朝日新聞社・伊藤氏の受賞報告寄稿に、平田主席研究員のコメントが掲載されております。 https://www.pressnet.or.jp/journalism/award/2022/index_7.html (2022年10月11日)

 

第三者報告内の重要な論点
 1. 統計作成担当者の「宿命」
 2. 2つのツケ
 3. 自浄作用の限界
残された課題と通常国会の論戦に向けて
結びにかえて

前編)に引き続き、国土交通省(以下、国交省)統計問題の「建設工事受注動態統計調査の不適切処理に係る調査報告書」(以下、第三者報告)を通じて、今回の問題を考えていく。本稿では、筆者がこれまでに政府統計に関して発信してきた内容を織り交ぜながら、第三者報告の重要な部分を紹介し、残された課題について論じていく。 

第三者報告内の重要な論点

1. 統計作成担当者の「宿命」

筆者は3年前の毎月勤労統計の問題に関する日本記者クラブにおける講演の際、統計作成に携わるものにとっての「3つの宿命」なるものを説明した。実はこのいずれもが、第三者報告の中で指摘されている。ここでいう「3つの宿命」とは、統計作成者の評価のされ方は「非対称的」であること(宿命1)、統計作成者の忙しさは理解されにくいこと(宿命2)、そして、統計作成は究極のチームプレーであること(宿命3)を指す。宿命1の非対称というのは、統計は公表されて当たり前(特に評価されない)である一方で、統計に「問題(ミス or 不正)」が発覚すると厳しく糾弾されやすいことを意味する。宿命2は、毎月の公表に関わるルーティンの作業を当たり前にこなしつつ、当事者にならないとなかなかわからない非定例の中長期的な課題の解決に取り組む必要があることである。宿命3は、統計作成は一人では絶対に不可能であり、集計に関するシステム対応を含め、健全な統計作成業務体制のもとで行われないと、質の担保が難しいことを意味する。

宿命1については、第三者報告は毎月勤労統計問題後の統計委員会における一斉点検(以下、一斉点検)に際し、「建設受注統計以外の統計(乙統計と呼ばれる大手50社に関する受注統計(注:今回問題となっている受注統計は非大手が調査対象の統計)を指すとみられる)に問題が発覚したことにより、一部管理職が非常に神経質になっていた」ことを指摘している。更に、係長が上司に相談したものの、「これらの上司が(書き換えについて一斉点検に報告することについて)消極的な立場であったために」報告をしなかったとの記述もある。そして、「自らがその問題の原因でないとしても、「問題の発覚した業務の担当者である」ということをもって、組織内外から批判やマイナス評価を受ける」ことを恐れたのではないか、と推察している。筆者もこの見立てを「基本的には」支持する[1]

宿命2については、体調等の理由により「十分に業務を遂行できない」担当係員が多かったり、受注統計の担当係員がいない時期すらあったりしたとのことである。また、「通常業務をこなすだけで手一杯となっており、上記のような通常業務ルーティン外の集計作業の点検や見直しを行うだけの人的及び物的余裕がなかった」とのことで、慢性的に実質的業務過多の状況にあったという。この第三者委員会の指摘は、受注統計の統計作成部署に対するものというよりも、むしろ国交省ひいては霞ヶ関の人事に対する批判である。

宿命3については、係長と担当係員が集計等の実務を担当し、課長補佐以上が中長期的な課題を担当し、双方の仕事内容の情報はほとんど共有されていなかったという[2]。統計部所内部での業務の縦割りの構図が垣間見られ、第三者委員会の報告書の中でも、まるで再現ドラマのように克明に記されている役職間での統計作成に関するこの悪しき分業が、厳しく批判されている[3]

この悪しき分業に関連して、筆者が特に驚いた点を4つ指摘しておきたい。第一に、調査票を業者から回収する実務を担う、地方自治体という、国交省外部向けへの年一回の貴重な説明会での(書き換えの指示を含む)受注額の調査方法の内容について、受注統計を担当する課長はおろか課長補佐ですら(そして場合によっては係長すら)把握していなかった可能性があるという点である。末端で回収される生データの質に対し、意識が向いていなかったことを明確に示す事実であり、調査票なんぞは自治体に回収させておけばよい、といった雑な取り扱いの雰囲気を筆者は感じてしまう[4]。第二に、201810月に部署の会議の場で係長が書き換えに言及した際、着任間もない上役の「室長が(同年8月着任)がけげんな表情をした上、(中略)出席者が触れてはならないことに触れたという雰囲気になった」ために、書き換えについてはそれ以降は触れないようになったこと、そしてその後課長補佐より書き換えの事実は課長補佐以下しか知らないことを説明されたことである。同じ部署内ですら、統計作成方法について正直に話せないというのは、統計作成の現場ではあってはならない話である。第三に、実施されていた書き換えの仕方がその時々の係長によってアドホックに変えられていたという事実である。統計の定例作業は、ルールに基づいて堅確に行うという統計作成の基本が全く守られていないことを意味する。第四に、「本件統計室においては書面決裁がなされることは少なく、上司に対する報告等は口頭で事実上伝えるだけにとどまることも多い」との点である。統計作成過程における臨機応変な対応は必要ではある。その場合、統計の継続性の観点から丁寧に経緯説明の資料を作成しておくことが肝要となる。これは、後になってその対応の経緯を確認する必要が出てくることが度々あるからである。

ちなみに、受注統計の掲載サイトをみると、受注統計の解説書に相当するものがみつからない。一応の概要説明は存在するものの、これだけでは一体どのように使えばいいか、ユーザーにはわからないと思われる。今回の問題を受けた国交省による不適切処理に関する資料が公表されたが、これも一見しただけでは理解するのは困難である(特に具体的な問題を説明した参考資料部分)[5]。スライド型資料は見栄えはよいが、説明を聞かないと行間の理解が難しいし、スライド毎に話が完結するために全体の流れが見えにくいというデメリットがある(これは筆者も大学の授業で学生に常に教えていることである)。きちんと文章型の資料でユーザー向けの説明書を作成し、それを見れば、自分たちの作っている統計について、第三者が理解できるようにされることをお勧めしたい[6]

 

2. 2つのツケ

筆者は毎月勤労統計問題の際の論考で、ルールを逸脱して統計作成を行う何らかのインセンティブ、またはルールを逸脱した作成を行わざるを得ない内部事情が存在してしまう理由として、霞ヶ関に内在する3つのツケの存在を指摘した。このうち2つは、第三者報告でも問題点として強調された[7]。第一は、霞ヶ関における統計へのリソース(資金や人材)配分の低下のツケである。実は、一斉点検の際、いくつもの基幹統計の掲載漏れ、公表期日の遅延等が頻発していた旨が明らかとなった[8]。統計の発表遅延というのは、よほどの理由のない限りはあってはならず、頻発しているという事実は、統計作成の現場が回っていないことを示唆していた。こういった状況の中で、まるでオリンピックのように数年おきに政府統計の問題が顕在化(繊維流通統計調査の不正(経済産業省、2016年)、毎月勤労統計(厚生労働省、2018-19年)、受注統計(国土交通省、2021-22年))する状態となってしまっている。第三者報告も、この部分について、国交省に限らず政府統計に関わる省庁に対して、問題を解決していく必要性を説いている。

2つ目のツケは、霞ヶ関のゼネラリスト志向のツケである。筆者は毎月勤労統計問題に関する前掲の論考で、「毎月勤労統計の不正の場合、長期間にわたって多くの管理職が問題に気づかず、気づいた後も問題を先送りするという対応をしていた。短期的なローテーションで、あらゆる仕事を如才なくこなす人材が評価される人事システムから、このように問題を先送りするインセンティブは生じる傾向があると考えられる」としたが、第三者委員会も、「人事政策における統計業務の軽視があるように見受けられるところ、統計業務の重要性を認識した上での人員配置がなされるべき」とした上で、短期での人事異動が前提となっていることの弊害に警鐘を鳴らしている。

 

3. 自浄作用の限界

今回の問題は、朝日新聞報道を発端に公になったわけであるが、第三者報告はそれ以前に問題が公になり得る機会があったことを指摘している。例えば、会計検査院からの書き換えに関する問題指摘を受けた後の国交省による一連の「危機対応」が、第三者報告の23ページ以降に紹介されている。会計検査院の指摘に反論するために詭弁を弄して自己正当化をして逃げ切ろうとするなど、明らかに初動対応で誤った対応をしており、もはや公僕として、公的統計が社会全体で利用される情報基盤であるということを無視した暴走状態に入っている。その後も本稿(前編)で指摘したとおり、通常の承認プロセスを経ずに、あたかも何も問題がなかったかのように取り繕おうとしている。そして、新任の課長補佐が問題に気付いた際も、内部で握り潰す力が働いた。更に、国交省は、一斉点検の受注統計に関する書面調査回答について、「実情を反映していない不正確な」回答をしている。加えて、業務マニュアルや統計作成上のポイントや手順に関する文書が有ると書面調査回答しているものの、属人的かつ非公式の引継書があるに過ぎず、その程度で文書が有るといってよいのか「疑問なしとしない」と第三者報告は評している。

これらの一連の事実からも自明なとおり、受注統計については自浄作用を期待する段階ではなく、「別の手段」を考える必要がある段階といわざるを得ない[9]。別の手段としては、自己点検のような内生的に問題点を炙り出せることを前提としたものではなく、第三者が国交省の同意の下(または同意の如何に関係なく強制的に)、統計作成の実情評価を適切に行える実効性のあるチェック体制を意味する。そして、このようなチェック体制は本来、政府統計全般に対して適用していくべきだと筆者は考えている。 

残された課題と通常国会の論戦に向けて

1月17日から通常国会が始まった。本国会の中で、受注統計の問題は論点の一つとなることが見込まれる。筆者は政治の素人であるが、経済統計に親しんだ一経済学者として、この問題に関心を有する国会議員の方たちにいくつかのメッセージを伝えたい。第一に、GDPへの影響については定性的には間違いなく影響があるが、定量的なインパクトは簡単には推し量れない(詳細は飯塚他(2021)を参照[10])。これについては、受注統計のデータがどの程度歪められたかが現時点では全くわかっていないため、いくら追求してもあまり有益な情報は出てこない。だから、この部分の追求に時間を割いてもあまり効果的ではない。ただし、「国土交通省「建設工事受注動態統計」問題を紐解く(アップデート)」でも指摘した進捗率調整の問題、朝日新聞報道にあった2020年1月以降の書き換え問題、第三者報告の第8章追補で新たに示された受注統計のミスの問題が、2020~2021年度のGDP統計に間違いなく何らかの影響を与えたこと、そして影響が軽微か否かは現段階では判断不能なことは付記しておく[11],[12]

第二に、オリジナルの調査票の保存期間についてである。受注統計の場合の保存期間は2年となっている。これは、デジタルデータの保存期間が永年となっているためである。例えば、厚労省は毎月勤労統計を含めて、紙の調査票の保存期間の3年から1年への短縮化を昨年8月に実施している[13]。政府統計の作成に関して性善説を前提にできるのであれば、この短縮化の流れは合理的な動きであろう。しかし、その前提が成り立たない現在、紙の調査票を最低5年、できれば10年程度は保存する必要があるのではないだろうか。また、デジタルデータについても、その都度のプロセスのデータを「上書きしたので、もう復元不可能」という状況にならないような手当(例えば、定期的なファイルの保存義務の導入)を検討すべきではなかろうか。是非、国会の場で議論して頂きたい。

第三に、これが最も大事であるが、統計作成部署のあり方に関する議論である[14]。統計の質の維持・向上は、リソースを割けば割くほど実現しやすい。しかし、リソースには制約がある。現実的には、制約付きの最適化、つまりできる範囲での改革を通じて、その中でできる最大限のことを実現していくための優先順位を考える必要がある。第三者報告で強調されている最優先課題は人材の問題であり、是非、政治家の皆さんもここに目を向けて頂きたい。大事なのは、この問題は付け焼き刃の対応では解決しないということだ。元日銀理事の早川英男氏(現・東京財団政策研究所主席研究員)も指摘するとおり、時間を掛けて統計のプロ育成をしないと問題は解決しないし、統計庁のようなハコを作ったところで、専門職がいないのに統計業務を集約しても仕方がない[15]。中長期的な視点で人材(統計専門職)を育成する必要がある。ただし、筆者は極めて専門的な統計の技術を身につけている職員と、基本的な統計作成のイロハを理解してルーティンをコツコツとこなせる職員といったように、複線的な人材の育成が肝要であると考えている。そして、統計専門職は府省をまたいだ異動を標準とすることで、縦割りの弊害を打破できるようにするとよいだろう。更に言えば、白書に携わるような経済分析を主戦場とするような職員にも統計部所の経験を積める仕組みを作れると、統計ユーザーは統計の動きをモニターし、必要に応じて統計メーカーに確認・照会を行う一方、統計メーカーはそれらに真摯に応え、統計の品質向上に努めていく、という良いフィードバックの仕組みが構築できることが期待される[16]。議論を通じて統計の不断の改善を意識できる組織になれば、自ずとミスや問題点を言い出しやすい風通しのよい組織に変革していけるのではないだろうか[17]。なお、忘れてはならないのが、統計専門職の人事的な意味でのインセンティブ・メカニズムへの心配りである。末端の調査員までを含めた統計作成に関する人事管理(採用や人事評価の仕組み、専門部署で昇進していける仕組み)・労務管理(特に勤務時間)に気を配った組織改革を考えて欲しい。 

結びにかえて

筆者は大学生時代に1年生向けのゼミで富山県統計調査課の『経済指標のかんどころ』という書籍を使う機会があった[18]。当時、なぜ国ではなく富山県がマクロ経済統計の見方の本を書いているのかな、と不思議に思ったものである[19]。ただ、この本は統計メーカーにとって大事なこと、例えば統計の見方や気をつける部分、などを統計メーカーの目線からコンパクトに教えてくれる。

そして特筆すべきは、統計メーカーはユーザーがどのように数字を使うのか、使いたいのかを意識することが大事だと言うことを教えてくれることである。テレビ番組でも、食材メーカーである農家や漁師が、食材ユーザーであるレストランで自分の提供した食材の一皿を食すことがある。その際、料理人が食材の長所を活かして調理をしている話が出てくる。統計についてもまさに同じで、統計を用いた分析をみたり、自ら統計のユーザーになってみたりすることで、統計の長短所を知ることができ、統計の改善意欲にもつながるはずだ。

ちなみに、この本の初版(1961)のあとがきには「この本は、なによりも全国の統計マンのさかんな心意気をあらわそうとしたもの」との一言が記されている。現在の霞ヶ関や地方自治体の統計部署でこのような勢いはどの程度あるのだろうか。EBPMEvidence Based Policy Making, 証拠に基づく政策立案)を真剣に標榜するのであれば、政府も本腰を入れて、統計部門の改革に力を入れて頂きたいと願うばかりである。

最後に、統計作成部署のガバナンス構造に触れておきたい[20]。今回の問題を通じて、筆者は改めて統計作成部署の独立性の確保の重要性を改めて感じた。統計は統計として作る、つまり統計の政治問題化を防止するためにも、利害や目的の異なる職場間の守秘のための情報壁(チャイニーズウォール)を作ることで、あらぬ誤解を招かないようにすべきだ[21]。今回の受注統計の問題でも、推計方法自体が問題ではないにも関わらず、それに起因する受注額の動きを念頭に、時の政権への忖度を疑うような意見が示されることが少なからずあった。これは勘違いも甚だしいが、こういったフェイクニュースもどきが統計への信頼に影響を与えるリスクは無視できない。そして、統計作成部署におけるガバナンス構造に気を配り、政権への忖度のような不正の発生を防ぐ仕組み作りを行う必要がある。


[1] ただし、筆者はこの説明について些か腑に落ちない部分もあるため、「基本的には」とした。実は、乙統計の問題は調査先業者の調査票誤記入であり、必ずしも国交省側の責任がそこまで強く問われる性質のものではない。このため、むしろ当時の毎月勤労統計への厳しい社会的な評価を目の当たりにして、甲統計(=受注統計)の問題発覚を恐れたという意味で神経質になったと考える方が素直なのではないか。

[2] 基本的な上下関係は、係員<係長<課長補佐<企画専門官<室長<課長<政策立案総括審議官(政総審)となっている。

[3] 第三者報告によると「係長以下の者と(中略)課長補佐以上の者の間で十分な情報共有がなされておらず、いわば情報の分断」がおきていたという。

[4] 自治体は末端でデータ提供者(受注統計の場合であれば建設業者)からのデータを回収・チェックする役割を担う。実は、筆者が以前に所属していた日銀の統計作成方法と政府統計のそれの大きな違いはここにある。つまり、日銀の場合は政府統計における地方自治体の担う役割を含めて、全て日銀内部の人間が統計の作成に携わる。このため、政府統計に比べると、日銀統計の方が統計作成部署での情報の共有がしやすく、統計調査の改善の必要性を意識しやすい。それにも関わらず、年一度しかない自治体との接点を持てる全国説明会の場に出す情報ですら役席が把握していなかっただけでなく、更に書き換えという面倒な作業を丸投げしていたということの責任は重く、自治体に対して礼を失するのではなかろうか。

[5] 国土交通省総合政策局情報政策課建設経済統計調査室「統計部門において把握している建設工事受注動態統計調査についての不適切な処理等について」(2022/1/14

[6] ちなみに、受注統計の年度報には、工期別の受注額のデータが出ているが、頻繁に負値が登場する。マイナスの受注額というのは意味不明であるが、そのような部分の説明資料も特に用意されておらず、不親切だと感じた(ただし、電話で照会をしたところ、丁寧に説明して頂いた(詳細は省くが、統計の作成の仕組み上、負値となる場合がある)。現場の方々が真摯に統計作成に取り組んでいる姿勢は感じられた)。

[7] 残りの一つは統計委員会と各省庁の関係に関するものであるが、第三者報告ではその点への言及はないため、説明は割愛する。関心があれば、日本記者クラブの「「統計不正問題の深層」(5)」を参照されたい。

[8] 「基幹統計の点検結果の整理について」(第2回点検検証部会配付資料、2019年3月5日)

[9] 毎月勤労統計問題を受けた基幹統計の一斉点検の議事録を調べてみると、初回の会議において、某委員が、「各府省から誠実に提供された情報を基に」との原則で点検検証を行うとあるが、仮に報告内容に虚偽等があった場合どうするのか、という趣旨の確認をした際、点検検証部会長は私見としながらも「まずは府省の誠実な対応というのを信頼していきたいと。それでも自浄作用というか、解消できない問題であったとすれば、それはまた別の手段というものを考える必要が出てくる」と述べている。

[10] 飯塚信夫・小巻泰之・大塚芳宏・平田英明・山澤成康・浦沢聡士(2022)一筋縄ではいかない、建設工事受注動態統計とGDPの関係」東京財団政策研究所Review, R-2021-032

[11] ここでの朝日新聞報道とは、岡戸佑樹、柴田秀並、伊藤嘉孝「統計不正、修正指示後も書き換え データ二重計上、国会答弁と矛盾」(朝日新聞、2022/01/12)を指す。

[12] 本来、第8章追補で書かれた一つ一つの問題事案はここの事案だけでもかなり大きな問題である。

[13] 厚生労働省「毎月勤労統計調査の変更について」(2021/10/01

[14] この段落の内容は、その多くを拙著「解決には統計部署の専門性と独立性向上が必要だ-統計のメーカー側の経験から考える「統計不正」問題」(2019年3月『論座』)に依る。

[15] 持田譲二「統計不正の本質は「人・金・技術」軽視—早川英男・元日銀理事」(ニッポンドットコム、2019/03/05

[16] なお、第三者委員会の指摘する若手研究者のような気軽に相談できる専門家の導入もその効果が期待される。彼らにとっても、統計作成の実務の現場を知る機会となるメリットもあるだろう。ただし、研究者からすると統計作成の現場の話を研究対象としているケースはレアであり業績としては評価されづらい側面がある。社会的な意義も考慮して、学会としてもこのような取り組みを前向きに評価する必要があるだろう。

[17] 筆者が日銀で物価統計を担当していた1990年代後半に、統計のスクラップ&ビルドの必要性に鑑み、オンラインでのユーザーニーズ調査を提案した。いわゆるパブリックコメントであるが、当時は極めて例外的な取り組みであったにも関わらず、部署内での承認を経て実施することができた。このような風土は統計メーカーとしてのやりがいにつながり、自然と統計メーカーとしての矜持を持てることにつながったと感じている。

[18] 内容は古くはなったが、今でもオンラインで閲覧可能になっている。

[19] のちのち研究仲間から聞いたところによると、富山県の統計担当者の勉強会をベースに作られていたが、ご尽力された中心人物の引退とともに、諸般の事情から改訂されなくなってしまったのだという。

[20] この段落の内容は、その多くを拙著「解決には統計部署の専門性と独立性向上が必要だ-統計のメーカー側の経験から考える「統計不正」問題」(2019年3月『論座』)に依る。

[21] チャイニーズウォール(元々は万里の長城の意味)という言葉は、金融業界で使われる用語であり、「企業の非公開情報を知り得る立場にいる引受部門等と、投資家に銘柄選定のアドバイスをする営業部門等の間に情報の壁をつくるため、両部門を異なる場所に離したり、管理体制を徹底するなどの物理的な隔壁のこと」(日本証券業協会)である。

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