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【開催報告】第1回 地方自治体におけるEBPM活用研究会(於:北海道上川郡東川町)
画像提供:Getty Images

【開催報告】第1回 地方自治体におけるEBPM活用研究会(於:北海道上川郡東川町)

September 20, 2024

R-2024-035

開催趣旨
地方自治体におけるEBPM人材の育成」プログラムは、2024820日、北海道上川郡東川町において、第1回目となる地方自治体におけるEBPM研究会を開催した。本プログラムでは、地方自治体との連携によりEBPMの実施をサポートすることを目的の一つとしており、連携先として東川町の協力を得ている。20245月の東川町長をはじめとした役場の方々との意見交換、町の視察(飯塚、小巻、平田が参加)を踏まえ、今回の研究会開催となった。研究会では、本プログラムに参加する6名の研究員が、EBPMや統計人材の育成につながる分析アイデアを発表、東川町役場の方々とディスカッションし、今後の研究の進め方について協議した。

出席者(東川町)
吉原敬晴 経済振興課 課長
西島圭哉 経済振興課 経済振興室 主任
山本侑貴 経済振興課 経済振興室 主任
浅井詩萌 経済振興課 経済振興室 地域おこし協力隊

出席者(東京財団政策研究所)
飯塚信夫 研究主幹
浦沢聡士 主席研究員
大塚芳宏 主席研究員
小巻泰之 主席研究員
平田英明 主席研究員
山澤成康 主席研究員
※小巻主席研究員はZOOM経由で参加

 

東川町役場(写真提供:飯塚信夫)

1.各研究員からの研究アイデアプレゼンテーション概要

⑴ 人口増減に関する東川町の取り組み ー「将来推計人口」データで見るこれまでと、これからー(浦沢)

人口増減に関する東川町の取り組みをデータにより評価するため、「将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)を用いて、その成果を可視化した。東川町では、常に「将来推計人口」による予測を上回って実際の人口が増加してきたが(特に、30代、40代といった年齢層で顕著)、そうした背景には、過去の傾向から見通された予測を覆す、住宅政策やコミュニティ醸成、景観づくり等の政策努力があることなどを議論した。

⑵ 「住宅・土地統計調査」を用いた空き家予測(飯塚)

5年ごとに実施される「住宅・土地統計調査」(総務省統計局)を用いて、今後の空き家率を予測する方法を検討した。空き家戸数を前回調査時点の住宅素数で割った比率を「空き家遷移確率」と定義すると、前回調査における1世帯当たり住宅数と相関が高いことなどを示した。

⑶ 空き家問題への各地方自治体の取り組み状況(小巻)

20222023年度に実地調査した市町村の空き家の取り組み状況を紹介した。どの市町村も空き家管理が難しく、各集落の自治会長や地域おこし協力隊等を利用した実態把握をしている。空き家を手放すなどの選択をしないのは祭祀関係、既存住民への配慮を理由とするものが最も多い。そうした中で、空き家バンクへの登録促進のための助成金、修繕助成金等の金銭的施策を採用している市町村が多い。空き家バンク登録後の成約についても所有権の在り方で大きな課題となっている。このため、中間管理住宅(市町村が借上げ)、定期付き借家権取引などの形態での取引を行っていることなどを紹介した。

⑷ ふるさと納税と東川町(平田)

東川町のふるさと納税のパターンに関して、返礼品の類別にみた品目構成や価格分布について、北海道の自治体やふるさと納税を多く受け入れている自治体と比較分析を行い、特徴をつまびらかにした。また、ふるさと納税にかかる経費の構造についても同様の比較を行った。これらの考察から、東川町の戦略の長所や短所を明らかにした。

⑸ チャットボットを利用した統計研修ツール(山澤)

計量経済学の学習用に作成したチャットボット(ある分野について対話形式で質問に答えるツール)について紹介した。また、計量経済学の教科書「回帰分析から学ぶ計量経済学:Excelで読み解く経済のしくみ」(2023)オーム社の内容を動画化したものを紹介した。テキストを入力すれば音声が合成できるソフトや、テキストから画像を生成するツールなどが実用化されており、AI(人工知能)を利用した人材育成ツールの可能性について検討した。

⑹ 市町村住民幸福度指標(大塚)

自治体におけるデータ利活用の事例として、市町村住民幸福度指標を紹介した。まず、主成分分析という複数の経済統計から総合指標を作り出す統計手法を解説した。次に、道内における179市町村を対象に総合指数を作成し、ランク付けした結果を示した。東川町や周辺自治体の順位付けが地元の方々の実感に合っているかなどを議論した。

研究会の様子(写真提供:飯塚信夫)

2.ディスカッション

町側からは、6名全ての報告について高い関心が寄せられた。
浦沢報告からは、東川町の人口が他市町村に比べて社会保障人口問題研究所の見通しから上振れていて、しかも、3040代人口の上振れが顕著という結果が示されたが、「3040代が上振れということをデータで見たのは初めて。確かに、子育て世代の移住相談が増えている実感がある」とのコメントがあった。
飯塚、小巻の空き家報告に対しては、東川町の空き家対策について町側から説明があった。町では空き家の状況に応じて流動化の交付金や取り壊し支援金など様々な取り組みをしていることが紹介された。
平田報告からは、全国市町村の傾向からみた東川町のふるさと納税の強み、弱みが示された。町側は民業圧迫にならないように配慮していること、高騰する輸送費にどう対応するか悩んでいるとの反応があった。 
山澤報告に関しては、行政対応(ふるさと納税のQ&A)でチャットボットをすでに活用しているという町側からの報告があった。大塚報告では、独自の統計手法による幸福度指標と東川町の位置付けが示されたが、指標作成に用いる統計データの選び方などにつきアイデアも寄せられた。

3.今後に向けて

研究会終了後、今後の進め方について町側と議論した。次回の研究会(ZOOM開催を予定)で、町側からこれまで実施した施策を説明していただき、EBPMの対象とする施策などを絞り込んでいくことで合意した。

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