E-2024-011
■開催報告
2024年9月27日、一橋大学大学院教授の関根敏隆氏とBNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏をお招きして、ウェビナー「世界インフレ後の経済政策を考える」を開催しました(モデレーターは早川英男 東京財団政策研究所主席研究員)。
全体は3部構成で行なわれ、まず第1部では関根氏から近年の経済学界におけるマクロ経済政策に関する論調を巡って、①世界金融危機以前のニューケインジアン全盛、金融政策万能論の時代、②金融政策がゼロ金利制約に直面し、財政政策が強調された長期停滞論の時代、③コロナ、ウクライナ危機を経た現状、の3期に分けて報告されました。これに対し、早川より日本の財政の維持可能性などについて質問を行いました。
続く第2部では、マクロ経済政策以外が主題となりましたが、河野氏からとくに関心の高い経済格差とAIに的を絞った報告が行なわれました。ここでは、イノベーションが直ちに人々の幸福につながるものではなく、イノベーションが包摂的か、収奪的かが重要と指摘されました。また、日本では近年労働生産性に比して賃金が上昇していないとして、日本の経済システムが収奪的なものに転じたのではないかとの疑問が提起されました。これに対し早川は、本格的な人手不足時代を迎え、日本でも賃上げ機運が高まってきたが、これは転機になるかと問いました。
最後の第3部は、登壇者間の一般討論と視聴者からの質問への回答に当てました。ここでは、①世界インフレはしばらく鎮静化しつつあるが、今後の世界は高めのインフレ、高めの金利の時代が続くのか、それともJapanification(日本化)の時代に逆戻りするのか、②米国大統領選が近づいてきたが、ハリス副大統領、トランプ前大統領のそれぞれが当選した場合、どのような経済政策が実施されると考えるか、③日本の金融政策について、これまでの植田総裁の下での政策運営をどう評価するか、今後の利上げはどう進められそうか、④米中デカップリングの世界経済、日本経済への中長期的影響をどう見るか、⑤今後の財政政策について、どんな分野に支出すべきか、財政再建はどのように進めるべきか、といった論点について議論が交わされました。
■開催日時
2024年9月27日(金)14:00~15:30
■登壇者(登壇順)
早川英男 東京財団政策研究所主席研究員、元日本銀行理事
関根敏隆 一橋大学大学院 経済学研究科 教授(アジア公共政策プログラム)
河野龍太郎 BNPパリバ証券株式会社 経済調査本部長チーフエコノミスト
■動画配信(YouTubeページへ遷移します)
■当日の発表資料
(1)「マクロ経済政策を巡る近年の論調」
関根敏隆 一橋大学大学院 経済学研究科 教授(アジア公共政策プログラム)
(2)「格差拡大とAI等に関する議論」
河野龍太郎 BNPパリバ証券株式会社 経済調査本部長チーフエコノミスト
■プログラム
・イントロダクション
早川英男 東京財団政策研究所主席研究員
・「マクロ経済政策を巡る近年の論調」(約25分)
関根敏隆 一橋大学大学院 経済学研究科 教授(アジア公共政策プログラム)
・「格差拡大とAI等に関する議論」(約25分)
河野龍太郎 BNPパリバ証券株式会社 経済調査本部長チーフエコノミスト
・ディスカッション、質疑応答(約40分)
早川主席研究員、関根教授、河野チーフエコノミストの3名が参加
■本研究プログラム紹介ページ
研究プログラム「世界インフレ後の経済政策レジームに関する研究」